7月半ばにしてこの暑さ。ここ数年猛暑日続きが前倒し状態になってしまっている。
世界的に異常気象が常態化しているらしく、確実に地球全体がなんらの変動期に入っていると、専門家たちが警告を発している。
私の部屋は角部屋になっていて、朝は東、昼は南の窓は容赦のない日射を浴び、冬は恩恵となっていた良すぎる日当たりが夏には怨嗟の的となる。
カーテンを閉めても住宅全体が、強烈な夏の太陽光線になぶり続けられているので、壁から暑さがじわじわと滲みいるかのようで、エアコンを強にしても少しはましかという程度。
マシン本体の熱放出のためよけいに部屋の温度があがりそうなのでパソコンの電源も入れず、スマホでネットにアクセスしチェックすべきサイトはチェックし、それに倦んだら本を読んでいた。
先日来から開いているのは、新潮文庫の「Story Seller」シリーズという、どちらかと言えば若い世代向けの作家の短編を編んだものである。
去年だか垂水の古本屋で3冊100円で買ってきて積ん読状態になっていたものを、先週たまたま手に取って開いてみたのだった。
伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、米澤穂信、佐藤友哉、道尾秀介、本田孝好といった執筆陣だが、いずれもライトノベル出身、講談社のメフィスト賞受賞作家、角川スニーカー文庫でデビュー、などといった経歴を書けばその傾向がわかる。
実は私はラノベやラノベ作家を軽くみていたきらいがあって、あんなもの若者が読むもの、コミック感覚の文字通り軽い読み物、まともな文学にあらず、大人の鑑賞に耐えうるエンタメの域にあらず、と見下していたのだが、なかなかどうして結構眼光紙背のひとときを楽しませてくれた。
有川浩「ストーリー・セラー」。文庫本のタイトルと同じだが内容は全く関係ない。もうすぐ60歳の爺さんビギナーの私に、さすがに号泣とまではいかないものの鼻の奥と両目の間をツンとさせてくれた、若い夫婦のラヴストーリー。
これは好評だったらしく、この短編の結末のその後のエピソードをくわえ長編化されたという。
有川は既読の作家で「レインツリーの国」を読んだ際、「お。読ませるではないか」と期待して次に選んだのが「阪急電車」。これが「なに?これ」と落胆させる出来でそのまま縁遠くなっていたが、こたびの短編に再び食指が動いている。
読まず嫌いで避けていた、該作家の世評高い「図書館シリーズ」や「三匹のおっさん」シリーズ。読んでみたくなってきた。
佐藤友哉「333のテッペン」。東京タワーのほぼてっぺんに近い場所での殺人。いわばほぼ空中の密室殺人といっていい不可能犯罪ものだが、この結末はちょっとひどいなあと推理小説の視点からみればまるでペケだが、主人公の内面の描き方が素晴らしく、後で解説をみたらジャンルの概念を無意味にする縦横無尽な独自な作風で知られ熱狂的なファンがいるらしい。純文学方面の賞も受賞している。この作家にはまた会いそうな気がする。
例としてこの二人の作家を採り上げたが、今の若い小説好きがどんなものを読みたがっているのか俯瞰できる短編集であり、文庫全体の宣伝文に新しい作家との出会いの場としてもどうぞとあったが、まさにそれに好適な作品集といえよう。
ラノベに対するアレルギーがほぼ霧散した。その分野の作家渉猟の旅が始まる。
こうして未知の作家と出会い、読書のフィールドが広がっていくのは本好きにはたまらない。気に入りの作家が増えれば増えるほど書店や図書館通いがいっそう楽しくなる。
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