「グランピング」という名のキャンプ形式があるらしい。
寝泊まりする場所はロッジ風コテージ風の建屋になっていて、冷暖房入浴施設完備。
建屋の前でバーベキューを楽しむシステムになっている。
近年人気を呼び、シーズンは予約で満杯大盛況とのこと。
これのどこがキャンプなの、ただの貸別荘のミニ版じゃないの、と思うけど、アウトドア遊びは大の苦手、しかしキャンプの雰囲気もそれとなく味わいたいという発作が数年に一度ある、というまことに身勝手な私のような人間にとって、なかなか重宝できそうだ。
野外でのバーベキューは好かん。ただでさえ暑いし、肉や野菜を焼く匂い、人間の体熱と発散する汗に誘われて蚊や蠅、蜂に虻がやってくるし、紙コップについだビールはたちまちのうちにぬるくなるし、クーラーボックスの氷も3時間がだいたいの寿命だ。
ぬるい水が溜まっただけのクーラーボックスを見ていると、憎々しくて蹴りたくなってくる。
準備も後片づけも大変、かつ面倒くさく、BBQなどいいことなんぞ少しもない。
昔はよく家の近所の浜で親戚とその友人たちが開催するBBQに誘われていたのだが、義理絡みだから余計に行くまでなんだかんだグズグズ言い、行けば行ったでクソ面白くもない顔で通してしまうから、とうとうお呼びがかからなくなった。ほっとしている。
何が面白いのか未だにさっぱりわからない。
みんなでワイワイやるところがいいとも言われるが、ともに飲み食いするのは多くても3~4人までぐらいがちょうどいい案配であると思っている者にとってはただの苦痛のひとときである。
多人数になると必ず場を仕切りたがる奴が出てくる。
鍋奉行ならぬBBQ奉行然と振る舞い、あれこれ余計なお世話な指示を与えたがる。どうでもいいような蘊蓄とともに。
あれはいつのBBQだったか、あんまり暑いんで紙コップに赤ワインに注ぎ、自分の手のひらでクラッシュさせた氷片を放り込み飲もうとしたら、お奉行様が「たとえ安物でもワインに氷はルール違反やな」とぬかしやがった。
半分笑いながらの言なので、冗談半分とはわかっていたが、こいつのそれまでの仕切りたがりの出しゃばりな態度に相当頭に来ていたから、「うるさい黙れ。放っとけボケ」と紙コップごと、そのしたり顔にぶつけてやった。
「なにするねん!」と顔半分に赤ワインを滴らせた奉行はいきり立つ。「じゃかましんじゃ、さっきからおのれは。男のくせにごちゃごちゃと」とこっちも酒の勢いを大いに借りて立ち上がる。
「まあまあまあまあまあまあ」の声が×30回ほど周囲の人から起こり、その場の一番の年長者が間に割って入り、なんとか収まった次第であるが。
最近、一人BBQというのも流行っているらしい。道具や食材一切自分一人で差配し、行きたいところに行って、誰に気兼ねすることなく、小姑めいた横やりをあれこれ入れられることなく、生焼けであろうが焦げかけであろうが好きな時に肉を食らい、好きな酒を好きなだけ飲んで。
お笑い芸人のヒロシがこれに凝っているらしく、BBQの場所などだいたい同じような場所にあるから、そんな一人BBQファンの何人かといつしかお馴染みとなり、ひとときの交歓を楽しむというらしい。
それならそういう人たちばかりが最初から集まればいいではないか、と思った人は一人BBQのなんたるかを理解できていない。
この一人BBQ、たしかに一人気ままで楽しいだろうが、野外でやることには変わりない。
暑さと虫がうっとうしく、横着で無精な私はやはり冷房が効いた部屋で、当たり前だが、炭おこしなんか不要なホットプレートで、あらかじめ食べやすいサイズに切られた肉や野菜を用意して、ほん近くに冷蔵庫があり、すぐに冷え冷えのビールを出せるポジションで阪神の試合でも見ながら飲み食いできる、つまりは「一人おうちBBQ」が一番重畳なのである。