早朝より小雨模様。午後よりやや肌寒くなる。それでもこの季節にしては暖かい空気の中で静かな雨音を聴く。
この3月半ばの気温はしかし今夜まで。夜半より北からの風強くなり、また寒気が戻るとの由。
2月に入って寒暖の繰り返しは確実に春に向かっていることでもあり、早咲きの桜のたよりも聞こえ来る。
IMG_20170217_130712一昨日より読んでいる「グーグル秘録」という分厚い単行本。これが巻追い措くを能わずの面白さ。
世界全体に影響を与えイニシティアブを握るに至ったグーグルの成長プロセスと功罪両面を、アメリカIT業界の栄枯盛衰の模様を絡ませながら、膨大な資料と筆者自ら足運びをいとわず積み重ねた取材の結果を編み込んでいく好著。
かつて野口悠起雄がものした「アメリカ型成功者の物語」(これも好著だった)に続けて読めば、今以上に興趣もぐっと増していただろう。
バイタリティとブレない不撓不屈の意志力を維持して、自分が叶えんとする夢、達成したい目標に突き進む者が、たとえ20代の若者であっても公平に評価し、有形無形の支援を与えるアメリカの国柄は、アメリカンドリームとして今なおアメリカ人以外の人間をも求心させている。
今も昔もアメリカが生み出したガリバー的企業の創業者の出自は移民が多い。いわゆるヨソモノに対してもアメリカはビジネスゲームのプレーヤーとしての資格を与える。それが結果的にあの国に莫大な富と新たな雇用をもたらした。
グーグルの創業者コンビのうちセルゲイ・ミハイロビッチ・ブリンも、その名前からしてロシア(正確には旧ソ連)からの移民である。
グーグル創業時の出資者であるラム・シュリアムはインド人であり、事業開発担当の副社長として迎えられたオミッド・コーデスタニはイラン人だ。
出自が何人であり、どこそこの国の出身など意識すらせず当たり前のようにアメリカのビジネスシーンで幹部クラスとしてそのステージで活躍している。
これだけをとってもトランプの移民反対政策がいかに馬鹿げているかよくわかる。自国の富をプロダクトしてくれる人材を遠ざけようとしているのだから。
日本もそう。移民導入政策にテロが怖いからと実に腰の引けたくだらない理由で反対する政治家がいるが、日本にとって有益なことをやってくれる人材ならどんどん入れてしまえばいいのである。
ソフトバンクの孫正義は、自身は移民ではなく在日2世にあたる人だが、彼がいなければ日本のインターネットのブローバンド普及は10年は遅れていたであろう。また元はお役所だった電電、国際電電の2公社が民間企業となって、事実上独占企業的にその利用料金を何様な標準で決めていた携帯電話の世界に風穴を開けた功績は、何かと世間の耳目をかきたてるソフトバンクの商法に首をかしげざるを得ないことを差し引いても評価に値する。
韓国人を揶揄蔑視する言葉でもって、彼自身をそして彼の出した結果を批判にもならない批判、下劣なヘイト的感情で主にネットで攻撃しているおバカさんたちにはそんな暇があれば、もっと建設的な方向に自分の目を向けなさいと申し上げておく。
他人の成功、それもにっくき韓国人だから腹がたつと、パトリオティズムの名を借りて、下衆根性もいい妬みとそねみをもてあそんでいる前に、さっさと英語でもマスターしてアメリカへ行っておんなじことをやればいいんだ。
その才覚や度胸、勇気、根性もないゆえ孫を攻撃することで、結果的には自分で自分をミジメに追い込んでいることに気づかない。笑止。
つまらない連中のことで寄り道してしまった。件の本はまだ半分ほどしか読んでいないが、グーグルの創業者以下幹部から技術スタッフに至るまで本当によく働く。ワーカーホリックではないかと思うほどそれこそ24時間働き詰めに働く。
さしずめ日本ならやもすればブラック企業の誹りを免れないが、グーグラー(グーグルの社員をこう呼ぶようだ)たちには「無料で検索エンジンを提供、ネットにアクセス可能な世界のあらゆる人にあらゆる情報をもたらし、ネットを通じての民主主義を確立する」という原則的なミッションが創業者や個々の社員の中で成立しており、それは宗教に殉ずる崇高感に似たものを伴っているからオーバーワークも苦にならない前提がある。
その代償として豪華すぎる食事を無料で提供する社員食堂、24時間社員の体調を管理調整するこれも無料の医療施設、マッサージ、浴場、理髪、要するにありとあらゆる福利厚生を用意し、仕事の報酬的には自社株を持たせストップオクションなどの恩恵に預からせる。
働けば働いた分だけ日本のサラリーマンの年収なんか足元にも及ばない額の金を手にすることが出来る。ブラックどころか、当節のいささか軽薄な言い回しを使えば「神」企業とさえいえる。ただし、チンタラチンタラダラダラ非生産的に決められた時間分だけ働いて、それでもべつに安月給でいいやというグータラはグーグルはいらない。
このほど日本の政府は「残業時間月60時間まで」の案を提示したが、過酷な時間数の残業や休日出勤を押し付けて手当も払わずという、正真正銘の極悪ブラック企業は大いに規制して欲しいどころか国権をもって強制的に罰則付きで規制すべきと思うのだが、働きたいという人間の労働時間まで国が容喙するのは筋違いではないかと思う。
こんな馬鹿げた労働時間規制の提示はグーグラーのみならず、世界中の企業のやる気満々で実際に仕事が出来るビジネスパーソンなら余計なお節介をするなと怒りたくもなるだろう。
本は今のところ、ほとんどグーグルの功罪の「功」ばかりを描いている。サブタイトルが「完全なる破壊」とある。いよいよ「罪」の部分が描かれていく。楽しみ。