晴れ。寒さ一段落。こうした寒暖の繰り返しが車輪となって、北風が空に描いた冬のみちに柔らかで遠慮がちな轍を刻みながら、私たちを春の方へ誘ってくれる。
やがて風の中に潮の匂いがしだしたら、このあたりでは春の方角へ進路を定めたという証。
今日は節分。例年のごとく義兄の店より恵方巻をいただく。穴子、車海老、玉子、干瓢、椎茸、三つ葉、高野豆腐といった面々が絶妙のバランスで手を組んだ酢と飯に巻き込まれている。ありがたいことである。image
恵方は今年も北北西。そちらを向いて「丸かぶり」する。家内安全無病息災商売繁盛大願成就棚から牡丹餅濡れ手に粟背中(せな)に床の間前には会席酒馳走左右に女懐に金…ありったけのいろんなことを願いながら寿司を食べていく。
もともと大阪は船場商人のならわしだったらしいが、柊を飾り鰯を焼くという風習はずいぶん昔から聞いたことがあるが(戦前船場の大家に奉公していたという、20年前に亡くなった祖母が言っていた)、この恵方巻に関してはその記憶が実はまったくないのである。ここ30年のうちに降って湧いたような「伝統的な習慣」なのである。おかしな話もあるもんだ。