花の盛り。

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真央ちゃん、ご苦労様でした。

浅田真央引退会見を見る。
この人ほど日本の老若男女まんべんなく愛されたアスリートはいないのではないか。
スケートなんか知りませんという人でも彼女を知らない人はまずいない。
顔でずいぶん得をしている。美女でもなくブサイクでもなし、どこかおっとりと茫漠とした面持ちは嫌味がない。
見ていて飽きが来ない顔だ。
わしが30歳若けりゃ嫁にしてやってもええぞと、あほなジジイビギナーをして自惚れさせる顔だ。
同じスケート選手の安藤美姫や村主章枝の美女だが、あのクドイ顔は2時間も見ていればうんざりする。
子供の頃から天才性を発揮、やがて氷上の女王として男女を超えた日本のスケート界に君臨、斯界を牽引してきた超大物らしさがどこにもない。
今なお「真央ちゃん」と子供にまで親しく「ちゃん」付けで呼ばれている。女王ちゃんなのだ。
町内にいくらでもいるおねえちゃんみたいな人はメディア各社のインタビューに素直に率直に自分の言葉で淡々と答えて、時折感極まってグッと涙をこらえ…ここんとこが日本人の琴線に触れるわけですな。
8286d6d2会見場になぜか(笑)「しんぶん赤旗」の記者まで来ていて「キム・ヨナについてどう思うか」と訊かずもがなな無粋な質問をぶつけていたが、真央ちゃんは華麗にすっと流して答えていた。
鎧袖一触。女王の片鱗をちらっと見せたのはさすがだと魅せた。
どうでもいいが、ニュースを伝える各局のアナウンサーやキャスター、ワイドショーの司会者たちが申し合わせたかのように、誰もが「浅田真央選手、お疲れ様でした」と締めくくっていたが、この場合の「お疲れ様でした」には違和感を抱く。
原則をいえば「お疲れ様」は下位者が上位者に向かって遣うねぎらいの言葉、あるいは同僚同士仕事の合間の連絡や退勤時に交わし合う挨拶語みたいなものだが、安易に遣いすぎだ。
真央ちゃんの場合はあえて心をこめて「ご苦労様でした」でいいではないかい。
日の丸背負っての重責、両肩にナショナリズムに重くのしかかられての五輪出場、そんなこんなで苛烈なまでのプレッシャーの下でベストを尽くしてきた人の苦労を称えるために私は「本当にご苦労様でした。これからはゆっくりしてちょうだいね」と労いたい。
しかし26歳の「女の子」に「若い人らがどんどん出てきて」と言わしめるスケートの世界の世代交代の早さには驚くばかり。
男子スケート界も羽生結弦選手は23歳にしてすでにベテランの域だというのだから。
なんかこないだ出てきたばかりの子だと思っていたら早くも次代のスターが生まれているらしい。いやはや。


筒井康隆炎上

筒井康隆が久しぶりにやってくれた。
「従軍慰安婦像に射精してザーメンまみれにしてやれ」とツイートしたところ、筒井が狙った通りに炎上。
このツイートに怒りまくった、彼の著作を韓国語で出しているあちらの出版社から三行半を叩きつけられた。
これまた計算ずくであったわい、うはははははは。わははははは。ひひひひひ。と私が住まう隣の区の高台にある作家の豪邸の奥から高笑いが聴こえそうだ。
なにせ、過去にてんかん患者が交通事故を起こす作品で物議を醸し、言論狩りにも似た患者団体の抗議に抗議する形で断筆宣言までやってのけた作家である。
表現のタブーに挑んできた人だけに今回の騒擾もさもありなん。
紙媒体への断筆の期間中も自身のホムペ限定で「めくら」「つんぼ」「おし」の「差別用語」を散りばめた作品をアップして意気軒昂たらしめていたのだから。
四方八方誰をも傷つけることなく丸くおさまる表現活動なんてありえない、と私は常々思っていたから、さすがは筒井だなあと快哉した記憶がある。image
今回も慰安婦という言葉から「従軍」だとか「韓国・朝鮮人」をはぎ取り、慰安婦=おのが性を切り売りする商売として見た場合、当然それは精液まみれになることが必然となる仕事であり、それをいちいちフィギュア化して当てつけがましく、非礼にも他国の大使館の前におっ立てて政治外交問題に結びつけ矮小化してしまうことを嗤ったに過ぎないと、長嶺駐韓大使が帰任したこと(そのことはツイートの前段に記されている)は日本政府がその矮小化を図らずも容認した形になったことへの抗議でもあると、僭越ながら凡愚の私は天才作家の胸中を推し量っている。
作家がツイートを削除したのは、そのあたりが理解出来ない人たちに対応するのもめんどくさいからだけであって、けっして浅薄な上っ面しかみない世論に屈したわけではなく、現にネットで公開中の「偽文士日碌」という彼の日記の4月4日付け日記文中には問題のツイート全文がそのまま記載されている。
久々に筒井康隆が読みたくなってきた。どうでもいいことだが、たまには垂水駅前をお散歩してくださいな。筒井先生。

昭和の御代よ戻ってこい。

火曜日の朝、電車の窓越しに須磨浦公園の桜を見たが、ほとんど咲いていなかった。
昨日の水曜日も含め、気温は高かったが、わずか2日で一斉に開花したとは思えない。
花見のお誘いもないことはなかったが、行ったところで蕾だけを見せられてはたまらないし、それよりもここ一週間続いている禁煙の日々が、外出すれば喫煙欲が鎌首をもたげてくることで途切れるのが厭さに断った。
禁煙は5日がヤマだとよく言われるところだが、人それぞれで私の場合は8日目となる今も煙草をふかすあの快感の記憶がなかなか去ってくれない。
それもニコレットを噛みながら、やっとこさ抑えている状態である。過去の2度の禁煙の経験からしてやはり10日~2週間は見ておかないとと思う。
よってこの2日、ひたすら家にこもり、パソコンいじりに読書三昧の時を過ごした。
某動画配信サイトの無料お試し1ヶ月コースを利用して、松田優作の「最も危険な遊戯」を観た。柴田恭兵が柴田恭平の名前でチョイ役で出ていた。優作がカッコよかったのはもちろんだが、恭兵もすでにカッコいい男のオーラを醸しだしていたのはさすがである。
indexただ40年近く前の映画である。日本の男性の喫煙率が80%という今では想像もつかない時代の作品。煙草を吸うシーンが当たり前のようにやたらに出てくる。
優作の喫煙姿は、現在禁煙中のつらい身ながら観ていて惚れ惚れする。まさに「男」が「男」、「女」が「女」でいられたいい時代でもあったわけだ。
同性のカップルが当たり前のように世に受け入れられる今はそれはそれでいいかも知れないが、大阪市が男性カップルでも里親になってもよいと判断したことはちょっとなあが正直な感想である。
育児というもの細かいところまで神経を行き届かせなくてはならない大事業で、神経の細やかさはどう見ても女の方が男より一頭地を抜いている。
と言ったら、母親に虐待されて育つより子供を本当に愛せる男なら別にいいではないかい、女だから育児に向いて男だから育児に向いていないなんて勝手な決めつけ、それこそ偏見である、とウチの女どもからかまびすしい総攻撃を食らってしまったが、うるせーわ。ここは譲れない。それとも俺の頭が古くて固いのか…。
聞き分けのない嫁と娘の頬をひとつふたつ張り倒し~…優作あんたの時代はよかった。男がピカピカのキザでいられた~♪。てな歌があったが、前出の映画と同じ頃に流行ったなあ。あんな歌は今は囁くようにしてしか歌えないなあ。
いやはやこの年にして、なんともまあ「ヘンな時代」を迎えることになったものだ。わたくしどもはもうついてはいけない。古き良き昭和の御代よ出来ることなら戻って来い。

エチゾラムのプチ禁断症状に苦しむ。

抗不安薬のエチゾラム(あの名薬「デパス」のジェネリックバージョン)が去年の10月から向精神薬に分類され30日分しか処方されなくなった。
1錠0.5mgを1日につき4回分処方してもらっているが、本来の抗不安薬としての効能に加え、肩こりや頭痛、軽い腰痛を抑える鎮痛剤としても効用がある万能薬でなにかと重宝しているので、30日リミットの処方は正直きつい。
他の生活習慣病薬とともに8週毎の処方であるから、次回の処方までとてもじゃないが保たない。
次回の4月半ばの処方日まであと10錠しかない。だから騙し騙し節約しながら服用しているとはいえ、当然服用の時間スパンは長くなるわけだから、その間にイライラや筋肉のこわばりを感じることが多くなる。脇下に汗が吹き出すこともままあり、かと思ったら頭の中に薄膜を張られたような症状も出て、そんな場合は何もやる気が起こらない。
困ったもんだとエチゾラム以外に処方箋なしで、つまり市販で買える抗不安や睡眠導入剤はないかとネットで調べたら「ウット」という薬が人気があるようだ。_SX425_
12錠で定価1,800円、Amazonでは送料込みで今日現在約1,300円の値づけである。
この薬の連続服用は1週間と限定されている。市販薬でも効き目は強い方だが、そのトレードオフとして副作用も結構報告されている。
私の場合、エチゾラムとの長年のつきあいで、この手の薬には免疫が出来ているからそのあたりは大丈夫だと思うのだが、安直に薬に頼ってばかりいると、やがてはアメ村あたりで売られているイリーガルのクスリ、ドラッグの世界に足を踏み入れかねないことを危惧して思案投げ首である。
もっともそんなものを入手するために要る先立つ物がないから、いらぬ心配ではあるが。
いざとなったら西成まで出張って、ユキネタといわれる安シャブでも買うか。しかし、あっこで売ってるのはポンプばっかしで炙りがないんや。当然純度がめちゃ低い。せやしよけいにタチの悪い中毒になる。ポンプはその名のとおり注射痕が残るしな。なによりあんなもんに手ェ出したら人間終いやで。
冗談はさておいて、エチゾラムの今は減薬状態でもある。転んでもタダでは起きない主義の私はこれを奇貨として、いっそエチゾラムの服用回数を大幅に減らすチャンスでもあると捉えている。
意外や意外、今、ニコレットを噛んでこれを書いているのだが、このニコレット、少なくともエチゾラム減薬から来るイライラや頭どんより状態をいくぶんか緩和してくれる。
ニコレットの主成分であるニコチンがそれを成さしめているのだから、考えれば意外でもなんでもないのだが。
煙草もこのごろ吸っていないし、身体にとってけっしてよくない向精神薬と喫煙癖の一掃に繋げていこうかと思っている。

四月朔日

今日より4月。どこかの大手企業の入社式があるのか、揃いも揃ってリクルートスーツの若者たちが朝の電車のロングシートに居並ぶ。
みごとに皆ほぼ同じ角度で背中を曲げて、スマホの上でせわしなく指を動かせている。
絵に描いたような没個性さ。一本の巨大な千歳飴が座席に寝そべっているかのようだ。
「個性ある人材を我が社は求めている」と、たいていの企業のトップは言う。
その言葉を本気にして個性を発揮しようものなら、周囲がよってたかって潰しにかかるのが日本のカイシャであり社会だ。
個性個性とのたまう本人が、自らの個性を殺し会社人間となりきり、常に上司の感情を忖度、周囲に対して仕事が出来る人物という印象操作にあけくれ、チョロチョロと鼠の如く巧妙に立ち回ってきたからこそトップに立てたのではないか、と嗤ってしまう。
シャープや東芝の無能経営者とその茶坊主重役どもをみているとそう思わざるを得ない。
春は3月で足踏みしていた。桜の開花が例年より遅い。
image画像は去年の4月2日のものだが、同じ桜を昨日見たら「蕾ふくらむ」の段階。
まだ裸木同然の木の下で、それでもママ友パーティだろうか、花見(というより枝見)の宴を張っていた。
シートの上をさっと盗み見ると、ワインのボトルが並び、ちゃんとガラスのグラスに注いでいる。
手製のサンドイッチやピザにローストビーフ、カナッペ、サラダボウルに山盛りの野菜などが所狭しと並べて、皆さんのおしゃべりにも花が咲く。
平安貴族の女官たちの、雅びたる花の宴のようで一幅の絵巻となりえる、というと褒めすぎだが。
缶ビール缶チューハイにカップ酒、日本酒一升瓶に紙コップ、乾き物、缶詰、スーパーのパック寿司などを猥雑に散開させ、放歌高吟高じて乱暴狼藉に至り警察官の世話となる酒嚢飯袋の下卑た連中の乱痴気騒ぎと大違いだ。
悲しいかな、花見の名所での宴はこういう手合いでほとんど占められている。だから私は花見の名所で桜を愛でようとは思わない。
酔うほどに密に咲き乱れる絢爛の桜花よりも、ローカル線の車窓でよく見かける、晴れ渡った空の下、畑の真ん中に立つ満開の一本桜に心惹かれるものがある。
そういう時、クロスシートでたまたま飲んでいた缶ビールがいっそう美味く感じられるのだ。

そばの味

冷やしものの麺が美味しい季節になってきた。さっそくもりそばを食べる。
池波正太郎が「もりそばでそばの先をつゆに少しだけ浸して、というのは東京のそばつゆが辛いから。少量のつゆとそばを口の中で合わせてちょうどいい味になるようにしているから。甘いつゆならそばちょこ全体に浸したっていい。甘い、あるいは薄味のつゆにまで東京式に先だけを浸して食べる必要なんてない」という旨を、なにかの随筆で書いていた記憶がある。
ということで、乾麺だがいわゆる「藪系」「更級系」のそばがあったので、希釈タイプのそばつゆを薄めずに器に入れて、東京方式で食べる、つまり「縄をたぐっ」たわけである。
そう、普通に「そばを食べた」と言えばいいものを粋がって「縄をたぐる」と口にしたがる半可通が、どんなつゆでも「あ~あ、そばをあんなにヒタヒタにつゆ浸しちゃって」と言いたがる。
寿司屋にもこういう客がいて、付け台に肘なんかつきながら「しゃり」「がり」「むらさき」「あがり」といった寿司屋内の符丁を粋がって口にして、板さんに注文したり、連れの客に魚について蘊蓄を垂れたがる。
「魚(うお)の方をむらさきにちょっこっとだけ付けなさいよ」とかなんとか、余計なお世話でしかない講釈をぶち垂れる。
トーシロがなーにが「うお」だ「むらさきだ」。素直に「ネタ」「醤油」と言えよな…
と、そんな客を見て寿司屋は付け台の内側から、こっそり嗤っていることも知らないで。
そばである。先だけ浸し方式で食べると、たしかにたとえ乾麺といえど、ほんのかすかにそばの香りが喉の奥から鼻に抜けていった。
よくテレビの食レポ番組で、そばの名所や名店に行き、もりそばが出された瞬間「わ。美味しそう。そばの香りも立ってますねえ」とレポーターが言っているいるが、あれは嘘である。
どんなそばでも盛りつけた段階で、そばの匂いなどするわけがない。奥歯で咀嚼した段階でようやくそばは香りを出す。そば粉だけのそばほどこの香りの濃度は高い。咀嚼に至らず口に入れた瞬間に立つものもある。
もりの薬味は浅葱かわさびが多いのだが、わさびはつゆに溶かさず、箸でつまんだ麺の上に乗せて味わう。ただしこればかりは山葵そのものを買ってきて、おろし金、できれば鮫革を貼ったもの、ですり下ろしたものを使いたいものだ。
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Vシネ教師鬼沢龍二(2)~龍二とホシト、桜並木道の別れ

北小へ行く途中にめちゃきれいな桜並木があるんや。
そこへさしかかったわしは思わず足を止めて、満開の桜に見入ったもんや。
時々吹く弱い風に花びらが舞い落ちる。
その中を腰にチャカ、エアガンやけどなてもうええか、を差し込んでミナ小へ殴り込みかけるわしは、さしずめ『唐獅子牡丹』の健さんみたいやで。
あっちは着流し、巻いた晒しに長ドス呑み込ませ、雪駄をチャラッチャラッと鳴らしてちゅうやっちゃが、こっちは上下「しまむら」で買うたジャージに玩具のテッポ挟んで、ラバーがすり減ったビーチサンダル、ペタペタいわしてって、えらい違いやけど侠(おとこ)の心意気に変わりはあるかいや。
川口、木村待っとけよ。
教え子をカタに取られた怒りも手伝うてや、カチ込みにかけた気分がぐっと盛り上がり自然に鼻歌も出てくるがな。
「ぼ~~くらはきっと待っている~君とまた会える日々を~さくら並木の道の上で~♪」
「おい、センせそこはやっぱ『唐獅子牡丹』やろが。義理と人情を秤にかけりゃ~義理が重たい男の世界~~♪」
前方でえらい音痴な歌が聴こえてきたんで、誰やいなと見たら、わりと大きな桜の木の後ろからから出てきたのはバルタン星人。
たしか6年2組のやっちゃ。
「ホシトやないけ。なんや?さっさと家に帰らんかい」
「センセ、どこ行くんや?」
「どこなとええやろ。おどれには関係あらへん。ほれ、下校時間もとっくに過ぎてるがな。宿題もあるやろが」
「ミナ小へ行くんやろ?。話は聞いたで。ボクも連れてってくれや。川口君や木村君には一方ならぬ義理がおますんや」
「あかん、あかん。なんでもええけどおまえ声変わりもしてないのにそんな低い声よう出せるなあ」
「そんなこと放っといてくれや。なあ、なあ、なあて。連れてってくれや」
「あ。こら。服をつかむな。おまえにつかまれたらたとえドンゴロスでも破れてしまうがな」
「いやや、連れてくれるまで離したれへん」
「ドあほ!可愛い教え子連れ戻すのに教え子についてきてもろた、と言われたらわしが恥かくんや。北小の鬼沢龍二は先公の風上にも置けんヘタレのガキや、ちゅうてこの世界では誰も相手にしてくれんようになる。必ずわしが川口らを助けだすよって、おどれは安心して待ってたらええんじゃい!」
「いやや!絶対ついてったるからな」
「おまえもわからんやっちゃのう。よし、こうしょう」
「そうしょう、そうしょう」
「まだ何も言うてへんかな。わしと勝負しようや。わしがおどれに負けたら、おまえを連れたる。わしが勝ったら、おまえはこのまま家に帰り。ええな」
「勝負て何のや?」
「はよカタがつく勝負や。わしは急(せ)いとるねん、ジャイケンや」
「ジャイケン?」
「そうや。インジャンとも言うな」
「よし。それでええわ。ボクが勝ったらセンせ約束やで。きょう日の大人は信用でけんからな」
「生意気言うな。いくでぇ、インジャンでほーい」
当然わしはグーを出した。
当然ホシトは負けた。
「わちゃー、負けたっ!ボクいっつもジャイケンでグー出されたら負けてまうねん、チキショー!」
「……何も訊かいでもおまえが相当アホなんはようわかる」
「な、なんでやねん!」
「おまえが勝てるただ一人の相手はミッキーマウスだけや。ドラえもんには絶対勝たれへん。そこをようわかっとけ。さっさとジャージから手を離さんかい!」
跪いて肩をうなだれ、「ボ、ボクも行きたかったのに…」しゃくり上げているバルタン星人を後目(しりめ)に殺してわしは歩を急がせたんや。
ホシトよ、アホやけどおどれの侠の誠はようわかった。
お互い、侠で生まれて侠で死にたいもんや、せやろ。


Vシネ教師鬼沢龍二(1)~侠(おとこ)の世界

職員室のデスクの上に足を乗せて、わしは放課後の疲れを癒やしとったんや。
スマゲーの「ローグファーム」ちゅうやっちゃ。
小学校の先公の給料なんて知れとる。
せやから無料の範囲で遊んどる。
「課金の分はあんたが払いや」と嫁はんにきつう言われとんのや。
ゴロまくんやったらどんな小学生にも負けへんけど、嫁はんにはめちゃ弱いんじゃい。
もうちょっとでボスキャラ倒せて畑が大きなるちゅうときにや、吉田が飛び込んで来よったんや。
「センセ、や、やられたんや~~」と裏返った声出してバタッと倒れよった。
見たら吉田は鼻から下が血まみれや、顔のそこらじゅう腫れあがっとるがな。
わしは椅子から飛び出して、可愛い教え子を抱きかかえたんや。
「吉田、どないしたんじゃい!」
「センセ、すんまへん、北小の奴らにボコされましんや。川口も木村もですわ」
「なんやと!北小のどいつがやりよったんや」
「蒲田です」
「蒲田て、北小きってのオカマでしかも番を張っとるあのガキかい?」
「そ、そうですわ。川口と木村返して欲しかったら、センセ呼んでこいちゅうて」
「なにぃ?わしに来いちゅうとんかいや。子供のくせして大人呼びつけるとはなんちゅうガキや。よっしゃ、吉田、おどれは保健室で寝とれ。で、蒲田のあほんだらはどこにおるんや」
そこへ教頭が職員室に入って来よった。
「話はここへ入りしなに聞いた。北小は最近わしらをナメくさっとる。特に若頭の田崎のボケ、小学校の教頭のくせしてわしらの米びつに手ェ入れるような真似しとるらしいやないけ。龍二、きっちりケジメとって男になって来い。骨はわしが拾たるで」
「カシラ…ありがとうございます。オヤジには?」
「校長にはわしからあんじょう言うといたる。道具持っていけ。かまへん」
わしはデスクの抽斗を開けてエアガンを取り出した。
職員室の後ろに置いたある水槽に向けてパシュパシュと試し撃つ。
水槽は見事に割れて和金と出目金が飛び出し床でピチャピチャ跳ねよった。
しもた! わしは今週職員室の生き物係やった。
「金魚のことなら気にするな。わしがまた夜店ですくうてきたる。水槽と水草、ポンプのセットはおまえがコーナンで買うてこい。2,980円で売っとる。税込みやったらええと3,218円やな」
こういうとこは教頭、いや若頭は細かいというよりぶっちゃっけセコい。
せやけどそれは、わしらの世界では思てても口にしたらあかんこっちゃ。
上の言うことは絶対や、上がラーメンを見て寿司やちゅうたらそれは寿司になるんや。
これがわしら侠(おとこ)の世界や、う~んマンダムちゅうやつやねん。
わしはチャカ、エアガンやけどな、を腰のズボンに差し込んだ。
蒲田、待っとれよ、きっちりカタにはめたーら!
オカマにはわからん侠(おとこ)の世界ちゅうやつ目ェ据えて見やがれ!


首相夫人は希代の「さげまん女」ということ

「社長、いかがです?時候もええことやし、今度の土曜か日曜、久しぶりにコースごいっしょさせて頂けませんか?」
「いやあ、わしもゴルフ好きやしね、行きたいのは山々やけどな、うちのカアちゃんがな『休みのたんびにゴルフ、ゴルフていいわね、たまにはわたしも有馬か白浜でのんびりしたいわ』と、こう嫌味をかましよるねん。悪いけどまたにしようや」
と、苦笑とともに言われて、ああそうですか残念ですね、と聞き流す営業マンは無能だ。
社長は言外に「温泉でも連れて行って女房孝行したいんや、なんとかならんか」と謎をかけていることに気づくこと、要するに「忖度」というのはこういうことである。
「肚芸」とも言える。あるいは「阿吽の呼吸」か。空気を読み取ることよりもっとタフな目抜き力と気配り力を要求される。
れいの籠原のおっちゃんが、海外プレス相手にした記者会見した際、この「忖度」という言葉を口にしたのだが、通訳はこれを「言葉と言葉の間を読みとる」ような意味合いで英語に訳していた。ま、おそらく海外の記者には理解不能だろう。
英語は「理」の言語、日本語は「情」の言語だ。「俺の目を見ろ、なんにも言うな」である。肚のうちを探って言葉に出さずして互いに分かりあえることに努力しないと、この日本ではやっていけないよ、移民や海外からの単身赴任者、あるいは留学生諸君は。
学生の頃、英作文の授業で思ったのは「逐語的かつ説明的具体的に訳さないといけないなんて、なんて英語はまどろこっしいんだ。『曖昧』のよさを理解できないとは。英米人って相当アホなんや」と。
だから「忖度」という、ある意味高度な心理操作など外国人には無理だと威張ってはみたもの、まあ日本の常識は世界の非常識とも言えないことはないが。
中央にしろ地方にしろお役人の世界はとかく出世志向主義者の巣窟のようなもので、たえず上司の肚のうちを忖度し、同時に我が身の保身に汲々としている世界、総理大臣といえば政官両方から見てこれ以上はない「上司」である。
その嫁が国有地取得認可の件で関係官庁に問い合わせた時点で、それは総理という上司の肚とみられる。これを「忖度」して上司の気に入るように動く(そもそも官民ともに宮仕えの身ならこれが出来なきゃな)のは当たり前であり、総理と嫁がいくら圧力はかけていないと言い張ってもそれは通らない。籠原のオヤジが言ったことは至極当然のことと納得できる。
imagesいささか品のない言葉で言わせてもらえばこの嫁は明らかに「さげまん」女である。夫婦共働き、仕事でもパートナーの関係ならいざ知らず、夫の仕事の領域にかくも具体的にしゃしゃりで出てくる女にロクな女はいない。
と言ったところで女性差別でもなんでもない。事実である。社長夫人の出しゃばりに泣かされている会社員ならよくわかるはず。
嫁はんが出しゃばったおかげで婿はんの首相は言い訳弁解詭弁屁理屈を並べ立て防戦一方である。
野党もひとつ覚えのように「口きき口きき」と攻めているが、与野党の地方自治体国会議員問わずツテがあれば、なぜか認可が下りやすく、なせか生活保護申請もすんなり通り、なせか交通違反切符が取り消しとなり、他にもあるが道理が引っ込み無理が通るケースがいっぱいあるのはなんでかな~と嗤ってしまう。
議員センセ方は口ききで選挙資金の元を取る。これって日本の常識で、しかし世界の非常識かな。よーわからん。
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中津川秀明/神戸在住のアラ還オヤジ
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